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コラム 堀江宏樹の「世界のお葬式」 presented by 雅倶楽部 2022年4月1日掲載

【イタリアの葬儀】墓地は最長30年のサブスク(賃貸)方式。30年以降はどうなる?!

イタリアでは息を引き取った場所がどこであれ、一旦自宅に運び入れるのが習わし。そして墓地は最長30年の賃貸方式。本稿では、そんなイタリアの葬儀について迫ります。

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ローマ・カトリック教会のお膝元のイタリアでは、国民の大半がカトリック信者で構成されています。しかし20世紀中盤あたりから、「自分はカトリックではあるが、熱心な信者ではない」と自認する人々がイタリアでも増えつつあったそうです。ただ、それでも他のヨーロッパ諸国に比べると、お葬式に対する教会の関与は大きく、非常に伝統的なお葬式が営まれている印象は強いのですね。

たとえば家族が危篤状態になると、教会から神父さまをお招きして「終油の秘跡」という儀式を受けさせるのがカトリックの伝統ではありますが、20世紀ともなれば他のカトリック国ではかなり簡素化、省略されることも多いこの儀式がイタリアでは(だいぶ形式化されたにせよ)行われているとのこと。

その一方、イタリアでも教会が行う“葬儀サービス”とは別に、地元密着型の比較的小規模の私立葬儀社が4000ほど存在し、1965年設立の「イタリア葬儀組合」に登録されています。一方、墓地だけでなく、霊柩車なども公営のケースが多いため、公営の葬儀会社もそれなりに存在しているのでした。

息を引き取った場所がどこであれ一旦自宅へ…

さて、イタリアでは家族のどなたかが息を引き取ると、そこがたとえ病院であったところで、家族は自宅にいったん遺体を引き取るのが習わしです。

ここで葬儀会社のスタッフの手で、もしくは彼らの手を借りつつ、遺体を清める湯灌が行われ、故人には伝統的な経帷子(きょうかたびら)ではなく、生前好んで着ていた衣服が着せられることが多いようです。お通夜では参加者全員がロザリオの祈りを唱和して、故人の霊に捧げます。

お墓は日本と違って賃貸方式が主流

カトリックが多いミラノでは、土葬が大半で、火葬される遺体は1%もないとのこと。しかし基本的に都心部の墓地は土地が限られているので大半は賃貸方式で運営されています。10年~30年程度の契約終了後は土の中から遺骨が拾われた後、納骨堂に移され、30年間は遺骨を管理するという仕組みになっている例が多いようです。

墓参の花といえばイタリアでは白いキクの花が主流で、11月1日の死者の魂のために祈りを捧げるべき日とされる「万聖節」(別名・死者の日)は白いキクを手にした墓参者によって墓地が賑います。日本のお盆に相当する日ですが、イタリアは公園墓地が中心なので、しめやかな雰囲気はあまりありません。

歴史エッセイスト・作家 堀江 宏樹

白いキクの花…

イタリアを代表するオペラ作曲家として、ヴェルディと並び称せられるジャコモ・プッチーニには『菊の花』という室内楽があるが、菊=故人を偲ぶ花というイタリア人の発想から書かれた名曲。
なおプッチーニの墓は、イタリア・トスカーナ州のヴィアレッジョという小さな街の彼の生家の敷地内に建てられた小さなチャペルにある。

イタリアには公園墓地を通り越し、観光名所といったほうが良さそうなお墓も存在しています。たとえばミラノの公営墓地「ミラノ記念墓地」は、王宮と見間違えるような白亜の記念廟が入り口にそびえており、異彩を放っていますね。

ミラノ記念墓地

いったん中に入ると、「芸術性のない墓を建てることを禁じる」というルールにのっとった、個性的な形、彫刻を関した墓石が所狭しと立ち並んでいる様はもはや壮観というしかありません。

「ミラノ記念墓地」中央には19世紀のイタリア文学の中心人物だったアレッサンドロ・マンゾーニのお墓があり、他にも各界著名人の墓地、霊廟が周囲をぐるっと取り囲むように存在します。日本でいう東京・青山墓地のような施設で、墓の土地を購入したり、他の人に転売することも可能です。

家族で引き継いでいくことで、名門であることをアピールできるステイタスシンボルになっているのです。また、ミラノゆかりの有名人や芸術家のお墓の多くが、「ミラノ記念墓地」に集中しているとされています。

ただし、『椿姫』や『運命の力』などの数々の名作オペラで知られるジュゼッペ・ヴェルディだけは大きな彫像が墓地内に目立つものの、彼のお墓は敷地のどこを探しても見つかりません。

ヴェルディは、その莫大な遺産を自分の屋敷を「音楽家憩いの家」とするべく、その運営資金にすることを希望しており、この館の敷地内に彼の妻と共に眠っているからです。ちなみに現在でもヴェルディの館は、彼の志を受け継ぎ、プロの音楽家専用の老人ホームとして存続しています。

ヴェルディに関しては肩透かしかもしれませんが、「ミラノ記念墓地」はローマの「プリマポルタ墓地」と並び、イタリアどころか「ヨーロッパでもっとも美しい墓地」として、国内外からも観光客を呼び寄せうる、観光名所として不動の人気を誇っているのでした。

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