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コラム 堀江宏樹の「世界のお葬式」 presented by 雅倶楽部 2022年12月1日掲載

呪いを避けるためテントで葬儀?!伝統と合理性が同居するお葬式とは

かつては伝統的な葬儀が行われていたシンガポール。現在では、合理化が図られ、カジュアルな葬儀に変わりつつあります。そんな中であっても、災いを招くアクションは忌避したり…と、かたくなに守り続けられる儀礼もあったりします。本稿では、そんなシンガポールのお葬式について迫ってみたいと思います。

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マレー半島の先端に位置し、日本の淡路島程度の国土に460万人もの人々が暮らすシンガポール。国民の75%が中華系ですが、マレー人、インド人、アラブ人などが暮らす多民族社会で公用語はマレー語、英語、中国語、タミール語の4つもあります。

儒教文化を持つ華僑の力が非常に強く、古式にのっとった、かなり伝統的な葬儀が行われていた土地柄なのですが、ここ数十年という比較的短い期間に葬儀事情は一気に合理化・カジュアル化したようです。

ご遺体(棺)が家のどこかに触れると…

昔から、葬儀は葬儀会社に任せる部分が大きいのですが、かつては家庭内でも多くの準備がありました。

当地で死はケガレとして考えられており、家の中の各所に宿っている神々を怒らせないよう、ガラスや鏡を白い布か紙で覆うことにはじまり、墓地や、墓の位置も風水の占い師が決めるなど、多くの宗教的慣例があったのです。

日本の経帷子(きょうかたびら)に相当する「死衣」は縫い目のない白い布でつくられ、奇数の枚数を着せるのが慣例でした。遺体の顔には白い布をかぶせ、枕元にご飯の入ったお茶碗を置いて、竹箸を2本突き刺した状態にするなどは日本の葬送文化を思わせるところもありますが、シンガポールの弔問客は香炉のたぐいではなく、このご飯にお線香を2本差していくのです。

また、納棺時や出棺時の移動しやすさが最重視され、家の中ではドアのある方向に故人の足を向けて安置するのが大切なルールとされました。世界でも第二位の人口密度のシンガポールではよほどの富裕層でなければ広い家には住めず、そういうところが影響しているのでしょう。

釈迦さまが亡くなった時の枕の向きが北側だったという説があるだけでなく、中国の儒学の古典『礼記(らいき)』内にも、「生者南面、死者北面」の一文があり、その解釈のひとつが日本の「北枕」ともいわれるのですが、シンガポールでは「北枕」は問題視されません。

どちらに頭を向けて死者を寝かせるかより、故人の遺体(あるいはお棺)の一部が、出棺などの移動時、家のどこかに触れてしまうと、その魂が悪霊となって家に棲み着いてしまうので、それだけは防がねばならないということのほうが重視されたのです。

蒸し暑さゆえに喪服のドレスコードはゆるめ

蒸し暑い国ゆえ、昔はお通夜・告別式は一晩だけでした。出棺までは夜通し、意図的に賑やかにして、麻雀やトランプをしながら過ごし、故人から悪霊を遠ざけようとする風習があったのです。

お棺は一番のお金のかけどころで、豪勢な漆塗りの厚手の木材が使われていましたが、これは当地が熱帯であるがゆえに、外気をできるだけ遮断し、遺体の腐敗を遅らせる目的もあったと思われます。

しかし、ここ数十年でシンガポールのお葬式事情はかなり簡略化されました。まずお通夜や告別式にあたるイベントは、公営住宅の地下の会場か、それ以外のケースでは葬儀会社が設営した家の外の黄色いテントの内側で行われます。納棺された故人と祭壇、そして小さな椅子とテーブルもあって、その上にはコーヒーセットやピーナッツなどのナッツ類が置かれています。祭壇の前だけでなく、このテーブルでも遺族と弔問客が故人を偲んで談話したり、慰め合ったりするのです。

テントが建物の外にあるのも、故人の身体、もしくは棺の一部が建物のどこかに触れることを嫌がるという考えの反映かもしれません。

喪服については、遺族は白もしくは黒という決まりがあるものの、それ以外の弔問客は柄が目立ったり、派手な色味でなければ、とくに色形が問題視されることはないようです。そもそも外なのに、冷房設備のついていないテントが通夜・告別式の会場とされているのですから、厚い生地の礼服などとても着ていられない……という合理的な考えに基づくのでしょう。

お通夜に親族で食べるものといえば、日本ではお寿司を思い出す人も多いでしょうが、シンガポールではそれがチキンなのだそうです。

* 実際のテントの様子はこちらのブログが参考になります。
タイ料理とシンガポールのお葬式 https://bluetokyo.exblog.jp/29664981/

弔問客が陽気に振る舞うのは悪霊除けのため?!

故人が亡くなってから4日ほど、こういうお通夜・告別式がテント内で夜通し行われます。喪主は基本的に在席しつづけねばなりません。

5日目になると故人のお棺は、故人の身体を付け狙う悪霊を遠ざけるための厄除けとして、派手な音楽を流し、特別に飾り付けられた車に乗せられ、火葬場に向かうのでした。近年はナンバープレートの部分に故人の写真が飾られ、側面がガラス張りに改造された車で、お棺を運ぶこともあります。そして遺族たちは少し歩いてお棺が乗った車を追いかけた後に、マイクロバスに乗って火葬場に向かいます。

火葬場が併設されている墓地にお棺の車と遺族たちが到着すると、ブラスバンドによる音楽が奏でられる中、お別れの儀式が行われることもあるそうです。派手好きなシンガポール華僑らしい演出ですね。

故人のお棺を火葬場の焼却炉に入れてしまうと、遺族たちはふたたびバスに乗ってテントに戻ります。そして、テント内で魔除けの効果の高い菊の花や、もしくはザクロの枝が浸かった水で、手や顔、首筋などを浄め、その後に解散するのだそうです。陽気に見せているのも、死にまつわるケガレを遠ざ、悪霊除けという観点があるからでした。

遺灰が上がるのは翌日以降で、その後はすぐに墓地に埋葬します。ちなみに山河に故人の遺灰を撒くことは公共道徳に厳しいシンガポールでは、違法だとされています。

シンガポールは多国籍国家だけあり、多くの宗派向けの墓地が存在します。日本に帰国する船の上で亡くなった明治時代の作家・二葉亭四迷が眠る日本人墓地なども有名ですね。

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