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コラム 堀江宏樹の「世界のお葬式」 presented by 雅倶楽部 2022年7月1日掲載

日本の葬儀にインスパイア?!激動する中国のお葬式 (都会編)

中国都市部の葬儀では、日本のように寺院から僧侶を呼んで読経をしてもらう…という場面はほとんどありません。現代中国では、お葬式とは宗教儀式の範疇には無いためと言われています。本稿では、激動の変化を見せ続ける「中国(都会)のお葬式」についてお話したいと思います。

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古来から先祖崇拝を重んじてきた中国。何度も王朝が交替し、第二次世界大戦終了後には社会主義国家・中華人民共和国として生まれ変わりましたが、「故人の遺体を大事にしたい」という中国人の意識が変わることはありませんでした。

しかし、中国の理想のお葬式のイメージはここ50-60年ほどの間にも、実に興味深い転換を遂げつつあります。今回は激動の変化を見せ続ける「中国のお葬式」についてお話したいと思いますが、中国の国土は広大で、日本以上に各都市ごとの大きな違いも見受けられるため、あくまで概論となることを最初にお詫びしておきます。

現在でも中国政府は宗教に一定の距離を置いていますが、第二次世界大戦後、「中華人民共和国」が発足してからはしばらくの間、宗教儀式そのものが弾圧され、寺院なども破壊されてしまう傾向さえありました。

しかし、20世紀後半には民衆の強い希望を受け、宗教活動は復活し、希望者は僧侶を呼んで、葬儀で読経してもらう信教の自由も認められるようにはなりました。とはいえ、社会主義的に推奨される葬儀というスタイルが厳然として残されました。これは無宗教の告別式が基本です。

もともと明治時代の日本で、無宗教の葬儀として告別式が考案され、人気を呼んだのですが、それを「社会主義国家においては宗教とは一定距離を置くべき」と考える中国人民共和国の政府が、理想のお葬式として採用、中国風にアレンジして用いていた事実は興味深いです。

さて、20世紀後半の中国では、誰かが亡くなると、遺族が地域の「公安局派出所」に死亡届を出し、その人の職業ごとの組合に相当する「工会」が葬儀の手配をします。遺体は地域の民生部局直営の火葬場に運び、ここで「追悼会」と呼ばれる日本の告別式にインスパイアされたスタイルのお葬式をするのです。この時、大量の木材を使った、中国の伝統的な棺は用いません。

戦後の中国では人口が何億人規模で増加しつつあり、木材の減少が問題視されていたからです。また、葬儀は「哀楽、三礼、告別の辞」の行程があるだけで、比較的あっさりと終わります。悲しい音楽などを流し、故人の遺体に敬礼したり、その功績や生前の思い出をスピーチで語るだけのシンプルなお式です。

その後、遺体は火葬され遺骨は、北京など土地不足が深刻な場所では墓地ではなく、当地の公営葬儀ホールである「殯儀館(ひんぎかん)」内の霊堂に安置することになります。これはいわゆるロッカー式の納骨堂ですね。

これが約40-50年ほど前の中国の普通のお葬式だったとしたら、現代の中国、都市部のお葬式はかなり様変わりしたといえるでしょう。

「哀楽、三礼、告別の辞」の要素がそれぞれボリュウムアップしました。現代日本の家族葬、その告別式を想像してもらえるとわかりやすいかもしれません。

中国都市部の葬儀のイマ

一方、現代中国の都市部では遺族の希望や予算に応じて、お葬式をプロデュースしてくれる葬儀会社が増えました。「○○殯儀礼儀公司」などの名称の葬儀会社が複数存在しています。

たとえばある方が病院で亡くなると、遺族が葬儀会社を選択し、担当者と打ち合わせを行います。故人の遺体を清める儀式を「遺体 SPA 儀式」と呼びますが、これは日本の葬儀会社から学んだ技術の応用だそうです。

葬儀会社の多くが自前の葬儀ホールを有し、殯儀館内のホールより設備が整っている点などが消費者の観点からは重視されるようになりました。病院で葬儀業者によって納棺された遺体は、そのまま葬儀会社のホールに運ばれ、いったん安置されます(これを「停霊」と呼ぶ)、そのお棺を前に「人生追思会」、いわゆる追悼式が家族や関係者を前に行われます。

故人がどういう仕事をしたのかという顕彰のほか、故人の人柄や趣味は何だったかなどを語り合い、その人生を振り返ります。この中で、寺院から僧侶を呼んで読経をしてもらう場合もありますが、とくに信仰心の強い人たちだけの間でだけ見られる傾向で、日本のお葬式ほどよく見る場面ではないようです。

現代の中国では、20世紀半ばの政府の意向とはまた別に宗教に対する情熱が薄れつつあります。これは全世界的な傾向かもしれませんが、現代中国ではお葬式とは宗教儀式の範疇にはなく、故人に先立たれ、残された者たちが悲しみを分かち合う“世俗的な習慣”としての発想で行われがちなのです。

これらの一連の儀式は故人が亡くなってから2日ほどの間にすべて完了し、3日目の朝(以降)には殯儀館内の火葬場で遺体を荼毘に付し、遺骨はそのまますぐに共同墓地に埋葬します。もしくは北京市や上海市など土地不足が深刻な都市部ではロッカー式の納骨堂に収める「入穴儀式」を行い、お葬式の行程は全完了です。日本の一部のように、お葬式が終わった後もしばらくは遺骨を自宅で管理するという風習は中国には(ほとんど)ないようですね。

また、現代の中国では自前のホールを備え、さまざまなタイプの「人生追思会」(=追悼式)をプロデュースしてくれる民間(私立)の葬儀会社が増加中なのだそうです。

以上、現代中国都市部のお葬式事情について歴史・伝統と比較しながらお話してきましたが、次回はより伝統に近い形で20世紀中も営まれ続けた中国地方のお葬式を取り上げてみたいと思います。

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