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コラム 堀江宏樹の「世界のお葬式」 presented by 雅倶楽部 2022年9月1日掲載

【中国の葬儀】香港では大富豪でも「土葬」できない本当の理由 (お墓編)

「お墓」の形は各国様々ですが、中国では価値観を重視し、多種多様な墓が用意されています。本稿では「お墓」に焦点をあてつつ、儒教式土葬ができなくなりつつある香港のお墓事情にも触れてみたいと思います。

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これまで2回分のコラムで、現代中国において故人がお墓に入る一連の流れを、歴史・伝統と対照させながらお話してきました。

今回は中国のお墓についてです。

現代日本ではお葬式が終了しても、故人のお弔いの儀式は続きます。その後は「初七日」以降、とくに「四十九日」までは7日ごとに「忌日法要」の日程が組まれているからです。しかし、お葬式が特に宗教的な儀式というわけではないと考える現代中国においても、日本の「忌日法要」に類似していると思える追悼の機会は組まれています。

人気なのは価値観にあわせて選べるお墓

中国では「追悼会」と呼ばれ、一般的に7日目、49日目、100日目と続いていき、最後が一周忌です。日本よりは少なめに設定されていますが、家族や関係者たちが当日もしくは、日曜祝日を選んで集まります。

ちゃんとお墓参りの風習もあります。忌日のほかに4月5日が「清明節」と呼ばれ、日本のお盆に相当する“お墓参りの日”と決められ、家族で墓地や納骨が行われている霊堂に赴き、墓石周辺の掃除などを行うのでした。

これらのお墓絡みのイベントごとは、中国北部よりも南部でより重んじられている傾向があります。たとえば中国南部に位置する上海には、中国国内でも代表的な葬儀会社の「福寿園国際」という大企業が存在しています。

葬儀、埋葬、墓地設備の提供、さらにはお墓参りの代行などにいたるまで、遺族を様々な側面からサポートしている会社です。

「福寿園国際」の子会社が経営している霊園「福寿園」は、上海市街地から西へ35キロほど行ったところに位置した大規模墓地です。しかもアジアでも最先端といわれる“テーマパーク型墓地”で、欧米で生まれた公園墓地の発想がさらに突き進められており、実に様々な形の墓石が区分に分かれて存在しています。

  • 幼くして亡くなった子供たちだけのお墓が並ぶエリア
  • “西洋風”の墓石が並ぶエリア
  • 中国の伝統的な墓石のみが建つエリア
  • 樹木葬のエリア

……などの区分があり、故人と家族の価値観が尊重され、実に様々なスタイルで埋葬が行われていることには驚かされます。

“西洋風”と書いたのは、そう聞くとわれわれはヨーロッパの教会の裏手にあるような墓石を想像しがちだからです。

しかし「福寿園」でいう“西洋スタイル”の墓地の墓石の多くは定形的で、縦横比が1:1.25ほどでチョコレート色をしており、故人のカラー写真が彫り込まれています。墓石の前には開かれた本を模した彫像があり、ここに故人の好きな言葉やモットーが刻まれている凝った作りなのです。

香港で儒教式「土葬」をするのは困難?!

上海と同じ中国南部に位置しながらも、世界一の土地不足に悩む香港では墓地事情もかなり違っています。

イギリスの植民地時代だった歴史を持つ街・香港では、外国人は「ハッピーバレー」と呼ばれる香港島の共同墓地内でキリスト教、イスラム教、珍しい所ではインドのヒンドゥー教やゾロアスター教などと宗派によって区分された土地に眠り、中国人は伝統的な儒教式にのっとった土葬墓に入ることが望ましいとされてきました。

しかし、圧倒的に土地不足の香港では郊外の霊園の土葬墓に余地が残されておらず、もはや新規での土葬墓地を確保するのは大富豪ですら難しいのだとか。納骨堂に遺骨を収めるのも、一苦労です。

世界一不動産が高値とされる香港では「家を買うより納骨堂に入るほうが高くつく」とさえ言われているからでした。
具体的には1350万円(100万香港ドル)払っても、A4サイズ(横210mm×縦297mm)も自由にする権利が与えられないので、庶民は手を出せないのです。

土葬墓にどうしても入りたい場合は、さらに莫大なお金を支払わねばなりません。おまけに法律が変更され、ヨーロッパ風に土葬完了後の10年後に土地を掘り起こし、遺骨を火葬しなおして小さなお墓に再葬する義務があります。何のための土葬かという話です。

お墓の値段が高騰するのは、中国特有の風水思想が香港で今なお強い影響力を持っているからです。墓地は谷や丘の斜面に作るのが風水では最良とされ、土地が余っていればそこで良しとできるわけでもないからですね。

そこまで窮屈な香港で埋葬されたくはないという価値観の持ち主も出てきており、そういう方の遺体は納棺後に石灰詰めの防腐処置を施され、中国本土の墓地が確保できるまでを「死人の館」「死人のホテル」などと俗に呼ばれている社会事業団体運営の設備にて安置されます。

最近の上海では「樹木葬」のほかに遺灰を川や海にまく「海葬」、「江葬」に人気が出ていますが、保守的な香港ではいくら墓所が見つからなくても、散骨の類はそこまで人気というわけではなさそうです。

これまで3回にわたって、現代中国のお葬式とその周囲を見てきました。
歴史・伝統と現代特有の様々な事情が絡み合い、複雑に変化しつづける中国の葬儀事情は、まさに中国という国家のあり方そのものだとも感じてしまいますね。

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